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前橋地方裁判所 昭和41年(わ)75号 判決

本店所在地

群馬県前橋市桑町五番地

株式会社 白牡丹

右代表取締役

関口三司

本籍

群馬県勢多郡城南村大字大島九〇八番地

住居

前橋市千代田町二丁目一一番四号

会社役員

関口久七

大正七年八月三日生

右に対する法人税法違反被告事件について当裁判所は検察官森井博文出席のうえ審理し次の通り判決する。

主文

被告株式会社白牡丹を罰金四〇〇万円に、処する。

被告人関口久七を判示第一の罪について懲役二月に、判示第二、同第三の罪について懲役四月にそれぞれ処する。

ただし、被告人関口久七については、この裁判の確定する日から三年間右の各刑の執行をいずれも猶予する。

訴訟費用は全部右の被告会社と被告人との連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は化粧品、小間物および洋品雑貨等の販売を業とするもの、被告人関口久七は、同会社の取締役として、代表取締役関口三司が老齢であり、かつまた病身であるため、同人に代り右会社の業務を統轄していたのであるが、被告人関口久七は同会社の業務に関し法人税を免脱しようと企て、同会社の商品売上の一部を公表帳簿より除外するなどの経理上の不正処理を行ない、

第一  昭和三八年一〇月三一日、所轄前橋税務署長に対し、昭和三七年九月一日より翌三八年八月三一日までの間の事業年度における法人税確定申告をなすに際し、同事業年度における所得金額は一二、九四四、四八一円、その法人税額は四、七九八、一一〇円であるのにかかわらず、所得金額は二、三五五、二二九円、その法人税額は七七五、六八〇円である旨の虚偽の申告をなし、もつて右会社の同事業年度における法人税四、〇二二、四三〇円を逋脱し、

第二  昭和三九年一〇月三一日所轄前橋税務署長に対し、昭和三八年九月一日より翌三九年八月三一日までの間の事業年度における法人税確定申告をなすに際し同事業年度における所得金額は一一、九九〇、八一〇円、その法人税額は四、四〇六、五〇〇円であるのにかかわらず、所得金額は一、九六〇、七二一円、その法人税額は六四七、〇三〇円である旨の虚偽の申告をなし、もつて右の会社の同事業年度における法人税三、七五九、四七〇円を逋脱し、

第三  昭和四〇年一〇月三〇日、所轄前橋税務署長に対し、昭和三九年九月一日より翌四〇年八月三一日までの間の事業年度における法人税確定申告をなすに際し、同事業年度における所得金額は一三、五六四、三六七円その法人税額は二、四九三、六〇四円その法人税額は七七三、〇一〇円である旨の虚偽の申告をなし、もつて右会社の両事業年度における法人税四、〇六五、七八〇円を逋脱し、

たものである。

(被告人関口久七の確定裁判を経た罪)

被告人関口久七は昭和三九年一月二〇日前橋簡易裁判所において業務上過失傷害罪によつて罰金二五、〇〇〇円に処せられ右の裁判は同年二月一六日確定したものである。

(証拠の標目)

(一)  判示冒頭の事実について、

一、株式会社白牡丹定款写。

二、株式会社白牡丹の登記簿謄本。

(二)  判示第一の事実について、

一、前橋税務署長大蔵事務官松本武夫の昭和四〇年一二月一六日付証明書(前証第二八号)添付法人税申告書写。

二、大蔵事務官高畑正男作成の各脱税額計算書説明資料(自昭和三七年九月一日至昭和三八年八月三一日修正貸借対照表・同勘定明細書・修正損益計算書・同勘定明細書)。

(三)  判示第二の事実について、

一、前橋税務署長大蔵事務官松本武夫の同年同月同日付証明書(前証第二九号)添付法人税申告書写。

二、大蔵事務官高畑正男作成の各脱税額計算書説明資料(自昭和三八年九月一日至同三九年八月三一日の分)。

(四)  判示第三の事実について、

一、前橋税務署長大蔵事務官松本武夫の同年同月同日付証明書(前証第三〇号)添付法人税申告書写。

二、大蔵事務官高畑正男作成の各脱税額計算書説明資科(自昭和三九年九月一日至同四〇年八月三一日の分)。

(五)  被告人関口久七の確定裁判を経た罪について、

一、検察事務官作成の同被告人の前科調書。

(六)  判示事実全部について、

一、岡阪嘉晃作成の各証明書。

二、小山利夫・杉本兼次・西村敏夫・安藤七郎・山田敏男・市川要・中村美雄・作成の各答申書。

三、杉本兼次の国税査察官に対する供述書。

四、須永俊郎・川端八郎作成の各証明書。

五、関口三司・関口俊雄・大蔵事務官高畑正男に対する各質問顛末書。

六、関口俊雄の検察官に対する供述調書。

七、当公判廷における証人剣持秀男、同中島重徳の各供述。

八、証人高畑正男の証人尋問調書。

九、被告人関口久七の大蔵事務官高畑正男に対する各質問顛末書。

一〇、被告人関口久七の検察官に対する各供述調書。

一一、被告人関口久七の当公判廷での供述。

(法令の適用)

被告会社の判示第一同第二の各所為はいずれも昭和四〇年三月法律第三四号法人税法附則第一九条により同法による改正前の法人税法第五一条第一項に、同第三の所為は右昭和四〇年三月法律第三四号法人税法第一六四条第一項に、それぞれ該当し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四八条第二項により合算した罰金額の範囲において被告会社を罰金四〇〇万円に処する。

被告人関口久七の判示第一、同第二の各法人税法違反の所為は昭和四〇年三月三一日法律第三四号法人税法附則第一九条により、同法による改正前の法人税法第四八条第一項に、同被告人の判示第三の所為は右昭和四〇年三月法律第三四号法人税法第一五九条第一項に、それぞれ該当する。

しかるに同被告人には判示のような確定裁判を経た罪があるので判示第一の罪について刑法第四五条後段第五〇条によつて先づ処断することとなる。それ故、右該当法条所定の刑のうち、情状により懲役刑を選択しその所定刑期の範囲において同被告人を懲役二月に処する。なお、右被告人の判示第二、同第三の各所為は刑法第四五条前段の併合罪であるから、情状によつていずれも所定刑中懲役刑を選択し同法第四七条本文但書第一〇条によつて犯情の重い判示第三の罪の刑に併合罪の加重をした刑期の範囲において同被告人を懲役四月に処する。ただし情状により刑法第二五条を適用し、この裁判の確定する日から三年間右の各懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用については刑事訴訟法第一八一条第一項第一八二条により、その全部を被告会社と被告人との連帯負担とする。

以上によつて主文のとおり判決する。

(裁判官 藤本孝夫)

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